ブルンストローム法の段階別リハビリメニュー

ピラティス・リハビリ情報

ブルンストローム法による上肢・下肢リハビリテーション

ブルンストローム法は、脳血管疾患後の運動機能回復を目的としたリハビリテーションアプローチです。患者さんの回復段階を「運動の促進・抑制」という観点から捉え、各段階に応じた適切な運動療法を提供することで、より効果的な機能回復を目指します。ここでは、上肢と下肢の各段階における具体的なリハビリメニューと、その実施にあたっての留意点、そしてこの療法全体のまとめについて解説します。

上肢のリハビリテーション

上肢の回復は、日常生活動作(ADL)の自立度に大きく関わるため、特に重要視されます。ブルンストローム法では、上肢を以下の6段階に分けてリハビリを進めます。

第1段階:弛緩期

この段階では、麻痺側の筋肉は弛緩しており、随意的な運動は全く見られません。リハビリの目標は、関節の拘縮予防と、感覚入力の促進です。

  • 他動運動:セラピストが患者さんの上肢を、肩、肘、手首、指の各関節にわたり、ゆっくりと、そして大きく動かします。可動域を維持・拡大することを目的とします。
  • 軽度のストレッチ:関節の拘縮を防ぐために、軽度のストレッチを行います。
  • 感覚入力:皮膚を撫でる、軽く叩く、温冷覚刺激を与えるなど、様々な感覚刺激を与えることで、麻痺側の身体への意識を高めます。
  • 支持:肘や手首などをクッションなどで支持し、重力による負担を軽減します。

第2段階:共同運動の出現期

この段階では、麻痺側の筋肉にわずかな緊張が生じ、共同運動(シナージ)と呼ばれる、特定のパターンでのみ運動が可能になります。随意的な運動はまだ限定的です。

  • 共同運動の促進:上肢の伸展パターン、屈曲パターンの共同運動を促します。例えば、肩を上げると肘も曲がり、拳を握ると肘も曲がる、といったパターンです。
  • 他動運動の継続:関節可動域を維持・拡大するために、他動運動は継続します。
  • 感覚フィードバックの強化:運動が起こる感覚を患者さんに意識させるように促します。

第3段階:共同運動の最大期

この段階では、共同運動がより強く、患者さんの意思で能動的に行えるようになります。しかし、個々の関節を単独で動かすことはまだ困難です。

  • 能動的な共同運動:患者さん自身の力で、共同運動パターンをできるだけ大きく、そして力強く行うことを促します。
  • 鏡を使った運動:鏡に映った自分の動きを観察しながら行うことで、運動への意識を高めます。
  • 抵抗運動の導入:共同運動パターンに対して、軽度の抵抗を加え、筋力向上を図ります。

第4段階:共同運動からの分離期

この段階では、共同運動パターンから外れた、個々の関節を単独で動かすことが可能になってきます。しかし、まだぎこちなさや、複合的な動きは難しい段階です。

  • 個別の関節運動:肘の屈曲・伸展、手首の背屈・掌屈、指の屈曲・伸展などを、個別に、そしてよりスムーズに行う練習をします。
  • 順序的な運動:例えば、「肩を少し上げてから肘を曲げる」といった、複数の運動を順序立てて行う練習を取り入れます。
  • 抵抗運動の強化:個別の関節運動に対する抵抗運動を強化し、筋力と協調性を高めます。

第5段階:運動パターンの分離と複合

この段階では、より複雑な運動や、いくつかの運動パターンを組み合わせた動作が可能になってきます。共同運動の制限がさらに軽減されます。

  • 複雑な運動の練習:例えば、物を掴む、持ち上げる、置くといった、一連の動作を、より滑らかに行えるように練習します。
  • 異なる運動パターンの組み合わせ:屈曲と伸展、回外と回内など、異なる方向への運動を組み合わせた練習を取り入れます。
  • 日常生活動作(ADL)への応用:着替え、食事、筆記などの、より実践的な動作練習を重視します。

第6段階:ほぼ正常な運動

この段階では、麻痺側の運動機能はほぼ正常に回復しています。多少のぎこちなさや、疲労時の軽度の協調性低下が見られることもありますが、日常的な動作は問題なく行えます。

  • 運動の洗練:よりスムーズで、精緻な運動の獲得を目指します。
  • 持久力・巧緻性の向上:長時間の作業や、細かい手作業の能力を高めます。
  • 運動の統合:日常生活の様々な場面で、回復した運動機能を統合的に活用できるように指導します。

下肢のリハビリテーション

下肢の回復は、歩行能力の回復に直結するため、ADLの自立、さらには活動範囲の拡大に不可欠です。下肢も上肢と同様に、以下の6段階に分けてリハビリを進めます。

第1段階:弛緩期

上肢と同様に、麻痺側の筋肉は弛緩しており、随意的な運動は全く見られません。目標は、関節の拘縮予防と、感覚入力の促進です。

  • 他動運動:股関節、膝関節、足関節、足趾の各関節を、セラピストがゆっくりと、そして大きく動かします。
  • 軽度のストレッチ:関節の拘縮を防ぐために、軽度のストレッチを行います。
  • 感覚入力:皮膚を撫でる、軽く叩く、温冷覚刺激を与えるなど、様々な感覚刺激を与えます。
  • 支持:必要に応じて、クッションなどで下肢を支持し、重力による負担を軽減します。

第2段階:共同運動の出現期

この段階では、麻痺側の筋肉にわずかな緊張が生じ、共同運動(シナージ)と呼ばれる、特定のパターンでのみ運動が可能になります。歩行に必要な運動はまだ困難です。

  • 共同運動の促進:下肢の屈曲パターン、伸展パターンの共同運動を促します。
  • 他動運動の継続:関節可動域を維持・拡大するために、他動運動は継続します。
  • 感覚フィードバックの強化:運動が起こる感覚を患者さんに意識させます。

第3段階:共同運動の最大期

この段階では、共同運動パターンを患者さん自身の意思で能動的に行えるようになります。個々の関節を単独で動かすことはまだ困難です。

  • 能動的な共同運動:患者さん自身の力で、共同運動パターンをできるだけ大きく、そして力強く行うことを促します。
  • 鏡を使った運動:鏡に映った自分の動きを観察しながら行うことで、運動への意識を高めます。
  • 抵抗運動の導入:共同運動パターンに対して、軽度の抵抗を加え、筋力向上を図ります。

第4段階:共同運動からの分離期

この段階では、共同運動パターンから外れた、個々の関節を単独で動かすことが可能になってきます。歩行練習の基礎となる時期です。

  • 個別の関節運動:股関節、膝関節、足関節の屈曲・伸展、外転・内転、回旋などを、個別に、そしてよりスムーズに行う練習をします。
  • バランス練習の導入:座位でのバランス保持や、立位での片足立ちなど、平衡感覚を養う練習を開始します。
  • 抵抗運動の強化:個別の関節運動に対する抵抗運動を強化し、筋力と協調性を高めます。

第5段階:運動パターンの分離と複合

この段階では、より複雑な下肢の運動や、いくつかの運動パターンを組み合わせた動作が可能になってきます。歩行の質が向上します。

  • 歩行練習の本格化:平行棒内での歩行、歩行器や杖を使用した歩行練習を行います。
  • 歩行パターンの改善:歩幅、歩調、足の運びなどを、より自然なものにするための練習をします。
  • 階段昇降練習:手すりを使用しながらの階段昇降練習を開始します。

第6段階:ほぼ正常な運動

この段階では、麻痺側の運動機能はほぼ正常に回復しています。日常生活での移動は、ほとんど問題なく行えるようになります。

  • 歩行の安定化と持久力向上:より長距離を、より安定して歩けるように練習します。
  • 不整地歩行練習:坂道や、凹凸のある路面での歩行練習を行います。
  • 運動の統合と再学習:社会活動への参加など、回復した機能を用いた活動範囲の拡大を支援します。

実施にあたっての留意点

  • 個別性:患者さんの状態は一人ひとり異なります。回復のスピードや、得意な運動・不得意な運動などを把握し、個別にメニューを調整することが重要です。
  • 早期からの開始:急性期を過ぎたら、できるだけ早期にリハビリを開始することが、機能回復の可能性を高めます。
  • 積極的な参加:患者さんの意欲を引き出し、能動的にリハビリに参加してもらうことが何よりも大切です。
  • 反復と継続:機能回復には、地道な反復練習と継続が不可欠です。
  • 疼痛管理:運動中に痛みが生じる場合は、無理せず、疼痛を管理しながら実施します。
  • 家族の協力:ご家族の理解と協力は、患者さんのモチベーション維持に大きく貢献します。
  • 多職種連携:医師、看護師、理学療法士、作業療法士などが連携し、包括的なケアを提供することが重要です。

まとめ

ブルンストローム法は、脳血管疾患後の運動機能回復において、段階的かつ体系的なアプローチを提供する有効なリハビリテーション療法です。各段階における具体的な運動メニューを、患者さんの状態に合わせて適切に実施することで、上肢・下肢の運動機能回復を最大限に引き出すことが期待できます。この療法は、単に運動能力の回復を目指すだけでなく、患者さんが日常生活をより豊かに、そして自立して送れるようになることを最終的な目標としています。そのため、リハビリテーションの過程においては、患者さんの意欲、忍耐力、そして周囲のサポートが不可欠です。