変形性股関節症の保存療法とリハビリ

ピラティス・リハビリ情報

変形性股関節症の保存療法とリハビリ

変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、骨が変形してしまう病気です。進行すると歩行困難や強い痛みを引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。手術療法も選択肢の一つですが、まずは保存療法とリハビリテーションで症状の改善や進行の抑制を目指すことが一般的です。ここでは、変形性股関節症の保存療法とリハビリについて、その内容、目的、具体的な方法、そしてその他の考慮事項を詳しく解説します。

保存療法の目的と基本原則

保存療法の主な目的は、以下の3点です。

  • 疼痛の緩和:股関節の痛みを軽減し、日常生活の質(QOL)を向上させる。
  • 機能の維持・改善:股関節の可動域を保ち、筋力低下を防ぎ、歩行能力などの機能を維持・改善する。
  • 進行の抑制:股関節への負担を軽減し、病気の進行を遅らせる。

これらの目的を達成するために、保存療法では複数のアプローチを組み合わせて行われます。

薬物療法

疼痛管理のために、様々な種類の薬物が用いられます。

鎮痛薬

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を抑える効果があります。内服薬、外用薬(湿布、塗り薬)があります。消化器系の副作用に注意が必要な場合があります。
  • アセトアミノフェン:比較的副作用が少なく、痛みを和らげる効果があります。
  • オピオイド系鎮痛薬:強い痛みに使用されることがありますが、依存性や副作用に注意が必要です。

関節内注射

  • ステロイド注射:強い炎症を抑え、即効性のある痛みの軽減が期待できます。ただし、頻繁な使用は軟骨を傷つける可能性があるため、回数には制限があります。
  • ヒアルロン酸注射:関節液の成分であるヒアルロン酸を関節内に注入し、潤滑作用やクッション作用を高め、痛みの軽減や関節の動きの改善を目指します。効果が出るまでに時間がかかる場合があります。

装具療法

股関節への負担を軽減し、安定性を高めるために装具が使用されることがあります。

股関節装具

  • 股関節サポーター:股関節周囲を適度に圧迫し、安定感を高めます。
  • 杖・松葉杖:患側への体重負荷を軽減し、歩行を補助します。正しい使用方法の指導が重要です。
  • 歩行補助具:状況に応じて、歩行器なども使用されることがあります。

物理療法

疼痛緩和や血行促進、筋力強化などを目的とした様々な物理療法があります。

温熱療法

  • ホットパック:患部を温めることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
  • 温水プールでの温熱療法:浮力により股関節への負担が軽減されるため、運動療法と組み合わせて行われることが多いです。

電気療法

  • 低周波治療:筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果があります。
  • TENS(経皮的電気神経刺激療法):神経を刺激して痛みをブロックする効果が期待されます。

リハビリテーション

リハビリテーションは、変形性股関節症の保存療法において非常に重要な柱となります。専門家(理学療法士など)の指導のもと、段階的に進められます。

リハビリテーションの目的

  • 股関節周囲筋の強化:股関節を支える筋肉(殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングスなど)を強化し、関節の安定性を高め、負担を軽減します。
  • 可動域訓練:股関節の柔軟性を維持・改善し、日常生活での動きやすさを向上させます。
  • バランス訓練:転倒予防のために、バランス感覚を養います。
  • 歩行訓練:正しい歩き方を習得し、効率的な歩行を促します。
  • 疼痛管理:運動療法と並行して、痛みをコントロールしながら進めます。

具体的なリハビリテーションメニュー

股関節周囲筋の強化運動
  • 殿筋トレーニング:お尻を持ち上げる運動(ブリッジ)、うつ伏せでの足の上げ下げなど。
  • 大腿四頭筋トレーニング:椅子に座って膝を伸ばす運動、壁に手をついて足を後ろに引く運動など。
  • ハムストリングストレーニング:うつ伏せで膝を曲げる運動など。
  • 股関節外転・内転運動:横向きになって足を上げ下げする運動、椅子に座って足を外側に開く・閉じる運動など。

これらの運動は、最初は自重で行い、慣れてきたらセラバンドなどの抵抗を加えて負荷を増やしていきます。

可動域訓練
  • 股関節屈曲・伸展運動:仰向けで膝を抱え込むように股関節を曲げる運動、うつ伏せで股関節を伸ばす運動など。
  • 股関節外旋・内旋運動:仰向けで膝を立て、足先を内側・外側に倒す運動など。

無理のない範囲で、ゆっくりと丁寧に行うことが重要です。痛みを感じる場合は、無理をせず、運動を中断するか、負荷を軽減します。

バランス訓練
  • 片足立ち:壁や椅子につかまりながら、片足で立つ練習。
  • タンデムスタンス(つま先とかかとを一直線に並べる):バランス感覚を養います。
  • 重心移動訓練:ゆっくりと重心を前後左右に移動させる練習。
歩行訓練
  • 正しい姿勢での歩行:背筋を伸ばし、視線は前方に。
  • 股関節の動きを意識した歩行:股関節をしっかり動かすことを意識します。
  • 歩幅や歩調の調整:無理のない範囲で、一定の歩幅と歩調を保ちます。
  • 杖の適切な使用方法:患側と反対側の手で杖を持ち、患側と同時に踏み出すように歩きます。

リハビリテーションの進め方

  • 初期段階:疼痛管理と炎症の抑制に重点を置き、無理のない範囲で軽度の運動を開始します。
  • 中期段階:筋力強化と可動域訓練を徐々に進め、バランス能力や歩行能力の向上を目指します。
  • 維持・増強段階:症状が安定してきたら、日常生活での活動を考慮した運動を継続し、筋力や柔軟性を維持・向上させます。

リハビリテーションは、継続することが最も重要です。自宅でもできる運動を指導してもらい、日常生活の中に積極的に取り入れることが推奨されます。

生活指導・注意点

保存療法やリハビリテーションの効果を最大限に引き出し、病気の進行を遅らせるためには、日常生活における注意点も重要です。

日常生活での注意点

  • 股関節への負担を避ける:
    • 長時間立ち続けることや重いものを持つことを避ける。
    • 和式トイレや床に座る生活は股関節に負担がかかるため、洋式トイレの使用や椅子・ベッドの使用を推奨する。
    • 正座やあぐらは避ける。
    • 急激な動作や無理な姿勢をとらない。
  • 適度な運動:
    • ウォーキング(平坦な道で)、水泳、水中ウォーキングなどは股関節に優しく、筋力維持や血行促進に効果的です。
    • 自転車(サドルを高く設定するなど工夫が必要な場合あり)も股関節への負担が比較的少ない運動です。
  • 体重管理:
    • 肥満は股関節への負担を増加させます。適正体重を維持することは、病気の進行を遅らせる上で非常に重要です。
  • 保温:
    • 股関節の冷えは痛みを悪化させることがあります。冬場などは、股関節を冷やさないように衣服で工夫することが大切です。

栄養指導

バランスの取れた食事を心がけ、特にカルシウムやビタミンDを十分に摂取することは、骨の健康維持に役立ちます。

まとめ

変形性股関節症の保存療法とリハビリテーションは、多角的かつ個別的なアプローチが重要です。薬物療法による疼痛管理、装具療法による負担軽減、そして何よりも専門家の指導のもと行われるリハビリテーションによる筋力強化、可動域改善、バランス能力向上は、症状の緩和、機能の維持・向上、そして病気の進行抑制に大きく貢献します。日常生活での注意点を守り、継続的にリハビリテーションに取り組むことが、QOLの維持・向上につながります。症状が改善しない場合や、進行している場合には、医師と相談の上、手術療法も視野に入れる必要がありますが、まずは保存療法とリハビリテーションを積極的に行うことが、変形性股関節症と向き合う上での基本となります。