高次脳機能障害とは?リハビリと家族のサポート

ピラティス・リハビリ情報

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、記憶、注意、遂行機能、言語、社会的行動など、知的・情緒的な機能に障害が生じる状態を指します。脳の損傷部位や程度によって、現れる症状は様々で、外見からは分かりにくいことも多いため、周囲の理解を得にくい場合もあります。

原因

高次脳機能障害の原因は多岐にわたりますが、主なものとしては以下が挙げられます。

  • 脳血管障害(脳梗塞、脳出血など): 脳への血流が途絶えたり、脳内に出血が起こったりすることで、脳細胞が損傷します。
  • 頭部外傷(交通事故、転落事故など): 脳が物理的な衝撃を受けることで、脳組織が損傷します。
  • 脳腫瘍: 脳腫瘍の圧迫や、治療のための手術によって脳が損傷します。
  • 低酸素脳症(心停止、窒息など): 脳への酸素供給が長時間途絶えることで、脳細胞が損傷します。
  • 感染症(脳炎、髄膜炎など): 脳やその周辺の組織が感染によって炎症を起こし、損傷します。
  • てんかん: 重積発作など、てんかん発作が脳に影響を与えることがあります。
  • 低血糖: 重度の低血糖が長時間続くと、脳細胞にダメージを与えます。

主な症状

高次脳機能障害の症状は、損傷された脳の部位によって異なります。以下に代表的な症状を挙げますが、これらが全て現れるわけではありません。

記憶障害

新しいことを覚えられない(前向性健忘)、過去の出来事を思い出せない(逆向性健忘)など、記憶の形成や想起に問題が生じます。

注意障害

一つのことに集中できなかったり、複数の情報に同時に注意を向けられなかったり、注意を持続させたり切り替えたりすることが難しくなります。

遂行機能障害

物事を計画的に進める、状況に応じて行動を調整する、目的を持った行動を遂行することが困難になります。例えば、朝食を食べるために冷蔵庫を開ける、パンを取り出す、トースターに入れるといった一連の動作を順序立てて行うことが難しくなることがあります。

言語障害(高次性失語)

言葉を理解したり、話したり、書いたり、読んだりすることに問題が生じます。単語の意味が分からなくなったり、適切な言葉が出てこなかったり、文章の構造を理解することが難しくなることもあります。

視空間認知障害

物の位置関係や距離感を把握したり、地図を読んだり、空間的な情報を認識したりすることが難しくなります。

社会的行動障害

感情のコントロールができなくなったり、対人関係を円滑に築くことが難しくなったりします。周囲の状況を理解せず、不適切な言動をとってしまうこともあります。

感情・情動障害

感情の起伏が激しくなったり、逆に感情が乏しくなったり、意欲の低下が見られたりします。

診断

高次脳機能障害の診断は、神経学的検査、心理検査(神経心理学的検査)、画像検査(CT、MRIなど)を組み合わせて行われます。特に、神経心理学的検査は、記憶、注意、遂行機能などの具体的な能力を評価するために重要です。

リハビリテーション

高次脳機能障害のリハビリテーションは、残存機能の維持・向上、代償機能の獲得、生活の質の向上を目的として行われます。個々の症状や障害の程度に合わせて、以下のような様々なアプローチが用いられます。

種類と目的

神経心理学的リハビリテーション

認知機能の回復や代償を目指します。具体的には、記憶力を補うためのメモやスケジュールの活用、注意力を高めるための訓練、遂行機能の改善のための手順の視覚化などが行われます。

作業療法(OT)

日常生活動作(ADL)や趣味活動への参加を支援します。調理、着替え、金銭管理などの日常生活における課題を、個々の能力に合わせて段階的に練習します。また、作業活動を通じて、集中力や意欲の向上も図ります。

言語聴覚療法(ST)

コミュニケーション能力の回復を目指します。失語症に対する言葉の理解や表出の練習、構音障害に対する発音の訓練、嚥下障害に対する訓練などを行います。

理学療法(PT)

身体機能の回復を目的とします。高次脳機能障害に伴う運動麻痺や歩行障害などがある場合、その改善を目指した訓練を行います。また、運動機能の改善は、精神的な安定にも繋がることがあります。

集団療法

他の利用者との交流を通じて、社会性の回復やコミュニケーションスキルの向上を図ります。共通の課題に取り組んだり、レクリエーションを行ったりすることで、孤立感の軽減にも繋がります。

リハビリテーションの進め方

リハビリテーションは、多職種チーム(医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、理学療法士、ソーシャルワーカー、心理士など)が連携して行われます。

  1. 評価: 初めに、詳細な評価を行い、個々の能力、障害、生活環境などを把握します。
  2. 目標設定: 評価結果に基づき、利用者本人や家族と相談しながら、具体的で達成可能な目標を設定します。
  3. 訓練実施: 設定された目標に向け、個々の特性に合わせた訓練プログラムを実施します。
  4. 効果判定と見直し: 定期的に効果を判定し、必要に応じてプログラムを見直します。
  5. 社会復帰支援: 自宅や職場への復帰に向けた支援も行います。

家族のサポート

高次脳機能障害のある方の家族は、身体的・精神的な負担を抱えることが少なくありません。適切なサポートは、家族のQOL(Quality of Life)向上に不可欠です。

家族が直面する課題

  • 理解と受容の難しさ: 外見からは分かりにくい障害のため、周囲の理解を得にくく、家族自身も障害の特性や影響を理解し、受け入れるのに時間がかかることがあります。
  • 介護負担: 日常生活における介助や、行動の管理、感情のケアなど、介護負担が大きくなることがあります。
  • 経済的な問題: 医療費や介護サービス費、収入の減少など、経済的な不安が生じることがあります。
  • 精神的な孤立: 家族だけで抱え込み、精神的に孤立してしまうことがあります。
  • 将来への不安: 回復の見通しや、将来の生活設計について、不安を抱えることがあります。

家族へのサポート方法

情報提供と教育

高次脳機能障害に関する正しい知識を提供し、障害の特性や対応方法についての教育を行います。これにより、家族の理解を深め、適切な関わり方を身につけることができます。

心理的サポート

家族の感情的な負担を軽減するためのカウンセリングや、同じような経験を持つ家族同士が交流できる家族会への参加を促します。

レスパイトケア

一時的に介護から離れることができるレスパイトケア(短期入所、デイサービスなど)を利用することで、家族は休息を取り、心身のリフレッシュを図ることができます。

経済的・制度的支援

利用できる公的支援制度(障害福祉サービス、医療費助成など)に関する情報提供や、申請手続きのサポートを行います。ソーシャルワーカーなどが相談に乗ります。

地域における連携

医療機関、リハビリテーション施設、相談窓口、地域住民など、様々な関係機関や人々との連携を支援し、孤立を防ぎ、社会的なつながりを保てるようにします。

本人とのコミュニケーション

根気強く、受容的な態度で接し、本人のペースを尊重することが重要です。本人ができたことを認め、励ますことで、本人の意欲や自信に繋がります。

まとめ

高次脳機能障害は、脳の損傷によって様々な知的・情緒的な機能に障害が生じる状態です。その原因は多岐にわたり、現れる症状も様々ですが、外見からは分かりにくいことが特徴です。リハビリテーションは、個々の症状に合わせた多角的なアプローチによって、残存機能の維持・向上や、代償機能の獲得を目指します。

家族は、介護負担や精神的な負担を抱えることが多く、情報提供、心理的サポート、レスパイトケア、制度的支援など、多方面からのサポートが不可欠です。高次脳機能障害のある方とその家族が、より良い生活を送るためには、周囲の理解と支援が何よりも重要となります。